「エミリー、パリへ行く」がフランス好きの心を揺さぶるわけ

話題沸騰中のNetflixのドラマ、「エミリー、パリへ行く」は、フランス好きから見るとさまざまな感情をかき立てます。

あくまでも独断ですが、私にとってパリほど絵になるドラマの舞台はありません。そしてこの人気のラブコメは、愛とインスピレーションと光に満ちた魅力いっぱいの憧れの街パリの、メジャーすぎてありきたりな、とはいえ、とびきりアイコニックで人気の高いスポットとフレンチ・ポップスに彩られています。

私はこの25年来、さまざまな立場でパリを訪れ、そのたびに新しい散策コースをたどり、新しい界隈を探検し、新しい体験にとっぷり浸る努力を重ねてきました。そしていつも、初めての冒険に心を奪われ、「旅人をからめとる罠」ともいうべきパリの名所にすっかりはまってしまっている自分に気づくのです。そうした名所の数々はドラマの中で、エミリーの驚きを通じてとても美しくロマンチックに紹介されています。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出制限措置が課されているあいだ、私の心の中では過去の魅惑の思い出がいくつか呼び覚まされ、親密感をもう一度味わいたい、私がこよなく愛するパリの魅力を再発見したいという気持ちが再燃しました!#JeRedécouvrelaFrance

「エミリー、パリへ行く」 (外部リンク) では、ディープな「パリっ子のパリ」をしっかり引き出しに閉まったまま、有名な地区や観光名所にだけ光をあてています。

同じように、シカゴから来たエミリーの目に映る「パリっ子たち」も、フランスやフランス人に対するアメリカ人のわかりやすい偏見(スノビシズム、フランス流のスキャンダラスな恋愛関係、魅惑的な女性の体型維持の秘密が「クロップ」、つまりタバコにあること、リュクスや洗練の世界の裏に潜む傲慢さ、実際には存在しない3時間のビジネスランチ、フランス人にとっては朝遅くに出勤するのがおしゃれ、など)をカリカチュアライズしたものになっています。

とはいえ、ドラマをじっくり鑑賞すれば、あるいは十分な洞察力や明察力を備えていれば、フランス流アール・ド・ヴィーヴィル(暮らしの美学)の控えめでさりげない表現にも気づくでしょう...。それはたとえば、退屈でありきたりのショップトークを排除したディナーの愉しみや、あの羨むべきワークライフバランスの確立や、まさに芸術ともいえるフランスの美食文化やワインのほか、祝祭に満ちたシャンパン、フランスのオートクチュールの神々しい威光とフランス流の巧みなクリエイティビティ、さらには同僚同士の連帯、頑迷に見えるフランス人のこだわりの中にある意外にオープンマインドな側面、といったものです。

この「スノッブの街」で、エミリーはまったくのよそ者です。しかも彼女は、フランス語を話せないにもかかわらず、いっときフランス人のサークルに身を置くはめになります。そして英語と仏語の「偽りの友」、つまり同じ、あるいは似たようなスペルなのに意味が異なる単語のせいでときに解釈を誤り、さまざま失敗を重ねます。その一方で、人生を楽しみ、フランスの伝統を守ろうとする彼らの愛と情熱を分かち合います。

不倫についていえば、たとえフランス人におおいに不倫願望があるにせよ、やはり不倫は決して家庭生活の成功ではありません。そしてメナージュ・ア・トロワ(夫婦と愛人の共同生活)は、ほとんどの文化でそうであるように、だいたいが映画の中だけの話です。とはいえ「愛人」は、冷笑的で偽善的なアングロサクソンの社会での受け止められ方と裏腹に、フランスの文化ではロマンチックな存在になっています。総じて「エミリー、パリへ行く」は、行間を読み取ることのできる鋭敏な人にとっては、謎と疑問の数々を明るみに出すドラマといえるでしょう。

いずれにしてもこれを観れば、フランスに恋をし、パリに対する情熱を再発見することになるはずです。

最後にドラマの嬉しい見どころをもうひとつ...。みなさんも最初はエミリーのように、客ではなくシェフが決めた焼き加減で供されるステーキを食べなければならないことにちょっぴり不満を覚えるかもしれません。でも食べてみれば、きっと美味しいと思うはず。しかもお皿を運んでくるのが、チャーミングなシェフ、ガブリエルとなればなおのこと。各人の好みにかかわらず、それこそ夢中で料理を味わうことでしょう!

さて、みなさんが夢の中で素敵なシェフを堪能しているあいだ、私は美味しいパン・オ・ショコラの思い出と、サン・ジェルマン地区のカフェに座ってパリの街を眺めていた贅沢なひとときの思い出に浸ることにいたします!

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