絶景の代名詞、複合遺産のピレネー山脈・ガヴァルニー圏谷

大規模の世界遺産の魅力

フランスとスペインの国境にまたがるピレネー山脈。中心にそびえるのがスペイン領にあるモン・ペルデュです。「孤高の山」を意味するモン・ペルデュは石灰質の山で、標高3,352メートル、ピレネー山脈では3番目に高い山です。

モン・ペルデュ山のスペイン側にあたる南斜面にはヨーロッパ一広大で険しい二つの峡谷が、フランス側のより峻厳な北斜面には三つの大規模な圏谷があり、ユネスコ世界遺産の対象となった地域の総面積は30,639haにのぼります。

フランス側ではピレネー国立公園の一部が登録対象地域に含まれており、氷河の浸食によって生まれたガヴァルニー圏谷、エストーベ圏谷、トルムーズ圏谷が圧倒的な景観で迫ります。

この地域はヨーロッパの山岳地帯でかつて広く見られた農牧民の生活様式を色濃く反映した牧歌的な景観を呈しており、現在においては唯一、ピレネー山脈のこの地域だけに残されています。

村落や農家、畑、牧草地、山間の道、点在する干し草や穀類を入れる納屋などが織り成す風景がヨーロッパ社会のかつての姿を今にとどめているのも貴重な価値とみなされ、登録理由のひとつとなりました。

ガヴァルニー圏谷とフランス最大の滝

ガヴァルニー圏谷はピレネー山脈の中心部にあります。このピレネー山脈一帯は1967年に国立公園に制定されていて、約4万5000ヘクタールの保護地区にはマルモットやイヌワシ、絶滅の危機に瀕しているヒグマなどが生息し、1200種の動物、400種の植物が観測されている貴重な自然環境となっています。

ガヴァルニーは壮大な氷河の圏谷で知られています。2万年以上も前に巨大な氷河がガヴァルニーから下方のルルドまで伸び、現在の地形をつくり上げました。

また、圏谷を囲むように3000メートル級の山が連なり、山稜からはヨーロッパでもっとも大きな滝、落差422メートルの「グランドカスカード」というガヴァルニーの滝をはじめ、無数の滝が落ちて迫力のある眺めが楽しめます。

ガヴァルニー圏谷でのハイキング

ガヴァルニーではレストランや駐車場のあるガヴァルニー村を出発地点に体力と所要時間に応じて1時間程度の散策からピレネーの山を越えてスペインまで…という難コースまでさまざまなプランのハイキングが楽しめます。

圏谷のグランドカスカードまで行くのなら村から往復で約3時間。川のほとりの遊歩道を行くと周囲には草原や針葉樹林。背景にある雪と氷河に覆われたピレネーの山々は歩き進むにつれて大きくなっていきます。

また、他の高山と違って、基本のハイキングコースにはガイド不要となっています。

特に、ガヴァルニー村から滝の下までの最も人気のあるハイキングコースは年齢に問わず気軽に歩けます。

他には、馬やロバでのトレッキングも可能。レストランからの眺めも素晴らしいので、歩きたくない人、歩けない人も十分にガヴァルニーを堪能できます。

【アクセス】パリからルルドまで約5時間50分(鉄道)。ルルドからガヴァルニー圏谷まで約1時間45分(バス)。

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