フランス観光親善大使就任記念 辻仁成さんインタビュー

フランス観光親善大使就任記念 辻仁成氏インタビュー

France.fr:2021年フランス観光親善大使をお引き受け下さり有難うございました。初めにオファーが来た時、どのようにお感じになりましたか。また最終的にお引き受け下さった理由を教えてください。

辻(敬称略): 実は受けるかどうか、いろいろと悩んだのですが、ぼくは在仏20年近くになります。息子はここで生まれましたし、この国の教育を受けて、来年にはいよいよ大学生です。20年近くこの国で生きていると、情もかなりわきましたし、感謝もあります。ここで一度、何か恩返しをしないとならないな、と思っていたのも事実で、そのタイミングに舞い込んできたのが、この話でした。「忙しいのに、無理ですよ」とスタッフに言われましたが、それを振り切って、お引き受けさせてただくことにしました。笑。やはり、本当のフランスの魅力を伝えられる役目は、20年ここで暮らした人間としてはやりがいのあるボランティアだと思います。


France.fr:ありがとうございます。フランスは人生における旅やバカンスのプライオリティが高い国です。フランスで生活される中でそれをお感じになることはありますか。また、辻さんご自身、フランスに拠点を移されてから旅の頻度は上がりましたか。

辻:ぼくは旅好きですから、パリに移り住んでから、パリを拠点に本当にあちこち旅をさせていただきました。特にフランス国内はほぼ主要都市や観光地は、回ったつもりですけど、しかし、最近、フランスの田舎をめぐる新しい喜びに目覚めまして、まだまだ、この国には知られてない素晴らしい土地がある、ということに気が付いたのです。つまり、この旅好きも第二段階に入ったかな、と思っています。フランスの田舎は、本当に個性豊かで、南と北では同じ国かというくらい個性が違いますね。


France.fr:たしかに。「千の顔を持つフランス」なら、相当旅を重ねられた辻さんのような方も満足させられるかもしれません。笑。普段はどんなスタイルの旅を好まれるのでしょうか。

辻:ぼくは車での移動がもっぱらです。見知らぬ土地に立ち寄り、だらだらと旅をするのが好きですね。最近は、高速のサービスエリアではなく、森の休憩所みたいな小さな休憩エリアがあるんです。トイレだけしかない、でも、ピクニックが出来るベンチとかあって、そこに車を止めて、手作りの日本のお弁当を食べたりするのが好きなんです。


France.fr:素敵ですね。創作活動の中で旅に出られることもあるかもしれません。執筆に専念されるためのお籠り旅、インスピレーションを得るためにふらり出かける旅、具体的な土地への取材旅行…。これまで発表された作品の中で、執筆に影響を与えたという場所があれば、教えていただけますか。

辻:そうですね。ハワイの日系二世をテーマにして書いた「日付変更線」その日系二世部隊が最後にドイツ軍と死闘を繰り広げたのがコルマールという土地で、息子と旅をしましたが、とっても静かな場所で、歴史の悲劇の土地でもありますが、そこからフランスが解放されたんだな、という場所でもあり、そこから山に入った森の中に、二世部隊への石碑があって、そこで涙が止まらなくなったことがあります。このことをフランス人に話すと知らない人が多くて、驚きました。


France.fr:旅の目的は人それぞれです。大自然の中で癒されたい、美味しい食事やワインに巡り合いたい、好きな小説や映画の舞台を訪れたい…。辻さんが旅に出られる時、おのずと重視されていることがありましたら教えてください。

辻:ぼくはワインやシャンパンやチーズやトリュフや、実にフランス的な食材や飲み物が好きなので、そういうものが旅の目的になることがあります。


France.fr:辻さんと言えば作家、ミュージシャン、映画監督としてのご活躍はもちろんのこと、今や料理の分野でもたいへんな発信力をお持ちです。フランス定番料理やお惣菜のレシピを紹介されたブログを読み、フランスを身近に感じるようになった方も多くいらっしゃることでしょう。こういったフランスならではのレシピや食の情報は、どういったところで得られているのですか。

辻:ぼくは人見知りをしないので、本当においしいレストランを見つけると、すぐ、シェフに会いたいと言って、必ずシェフに「あなたは素晴らしい」と一言残すようにしているんです。だから、覚えられたりしています。田舎のマルシェなどでも親しくなった料理の方や料理人の方もいます。そういう方々からいろいろと教わったりもします。


France.fr:これから観光親善大使として、日本の方々へどのようにフランスを伝えていきたいと思われますか。

辻:観光地はもとよりも、フランスには偉大な文化が根差しています。どのような観光地にも必ず文化的な何かと繋がっているところが多いのです。歴史や文化と美味しいや美しい風景はセットなんですよ。文化的なフランスのほかの国には絶対にない魅力を発信できればいいなぁ、と思います。


France.fr:改めて、フランス観光親善大使をお引き受けくださり有難うございました。今年一年、何卒よろしくお願い申し上げます。


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