フランスの人気ブロガーが案内するサントロぺのワイン散歩

お日さまが輝く12月のコート・ダジュール。散歩に繰り出すにはうってつけです! ムアン=サルトゥ(Mouans-Sartoux)を出発して1時間、わたしたち二人が到着したのは、サントロペ湾のご近所さんのお宅。ここからワイン散歩に出かけます。選択肢は膨大にありますが、チャーミングな小規模経営のワイン生産者を選んでみました。さあ、出かけましょう!

ラマルチュエルのシャトー・ヴォルテラ

今日最初に訪ねるのは、1930〜40年代からあるラマルチュエルのシャトー・ヴォルテラです。ジョセフィン・ベイカーやマルセル・パニョル、さらにはジャン・コクトーも訪れたことがある、立ち寄り必須のスポットです。

ここの何に惹かれるのかといえば、それはこの荘厳な石造りの建物と地中海を望む景色です。残念ながらシャトーには入れませんが、醸造所は見学可能、試飲をして赤ワインについて知ることができます。この地方なら当然ロゼと思いがちですが、ここではそうではなく赤ワインというのが驚きです。(なお、赤ワインは全体の生産の65%を占めるそうです。)

ちなみに、どうしてもシャトーが見たい場合はどうしたらいいか、フランソワーズさんがこっそり2つの方法を教えてくれました。一つはここで結婚式をあげること。もう一つは、あのクリスチャン・クラヴィエ監督による2021年公開予定の映画『サントロペを知っていますか(原題Do you do you Saint-Tropez)』の上映情報をチェックすること。

ガッサンのシャトー・バルベイロル

お次のシャトー・バルベイロルを目指し、わたしたちの散歩は続きます。ここでちょっとだけ歴史を。シャトーのオーナーである(他にシャトー・ドゥ・ラ・トゥール・ドゥ・レヴェックChâteau de la Tour de l’Évêqueも所有)レジーヌ・スメイルさん(Régine Sumeire)は、この地方で名を知られるクリアなロゼワインの生産者です。そのレジーヌさんが1985年に世に送り出したのが「薔薇の花びら」を意味するペタル・ドゥ・ローズ(Pétale de Rose)という、プロヴァンスで初のロゼ・クレールと呼ばれるワインでした。…というのがあらまし。

わたしたちは年間を通してシャトーで働いているエレーヌさんに迎えられて、楽しく試飲を体験し、美味しいロゼワインに出会い、いろいろとお話を伺いました。シャトーは2005年からビオ認証を受けていますが、現在、より厳格なビオワインの証「デメター(Demeter)」の基準を満たすべく取り組んでいます。地元はもちろんのこと、フランス全土、そして海外のレストランとも定期的な取引があり、レジーヌさんはどうやらカナダで人気者らしいです。

見学の締めくくりに美しい建物の周りを散策します。お庭も同じく美しく、いつもそこにはお日さまがあります。
シャトー・バルベイロル公式サイト (外部リンク) (英語)

コゴランのシャトー・デ・ガルシニエール

ここからはコゴランを目指します。シャトー・デ・ガルシニエールはプラタナスの並木道の先にあります。家族経営でワインを生産しているここでわたしたちを迎えてくれたのは、オーナーの孫娘のメリッサさんです。メリッサさんはこの美しい建物に暮らしていらっしゃいます。(なお、あまりにも素敵なため、シャンブルドット(民宿)かと聞かれることもあるそうですが違うとのこと。)

ここで造られるワインの7〜8割がロゼですが、赤や白も生産されています。素敵な地下貯蔵庫もあり、ワインの試飲のみならず、プロヴァンス地方の素晴らしい名産品を試食できます。蜂蜜やタプナード、400種もの商品を扱うガッサンのメゾン・デ・コンフィチュール(Maison des confitures)のジャムなどがあります

メリッサさんのお話を伺っていると、情熱をひしひしと感じます。一族の歴史には驚きました。その昔は林業を営んで特にコルク樫を生産したり、ボール紙が導入される前の時代には、マルセイユ石鹸の箱を作る工場で働いていたりしたこともあるそうです。

かつて修道院だったという建物がすっかり私たちのお気に入りになってしまいました。すべてが美しいのですが、建築当時、東風から建物を守るために陶製のタイルで覆ったという壁はとくに素敵でした。
シャトー・デ・ガルシニエール公式サイト (外部リンク) (フランス語)

コグランのシャトー・サン=モール

今日最後に訪ねるのは、同じくコグランにあるシャトー・サン=モールです。ここは他と規模の異なるワイナリーで、60ヘクタールのぶどう畑では年間32〜35万本のワインが造られています。

シャトー・サン=モールは、コート・ド・プロヴァンス(Côtes de Provence)のアペラシオンの最高位にある特別な区画を有するもっとも贅沢なシャトーの一つです。カンヌのマルティネス、パリのジョルジュ・サンク、サントロペのセネキエなど名だたるホテル、レストランに 置かれているワイン「クロ・ドゥ・カプリュヌ(Clos de Capelune)」はここで生まれました。
シャトー・サン=モール公式サイト (外部リンク) (フランス語)

カネ=デ=モール(Cannet-des-Maures)のシャトー・サン=ルー(Château Saint-Roux)

帰り道に、前からずっと行きたいと思っていた場所にちょっと寄り道をします。このあと詳しく話しますが、シャトー・サン=ルーは期待通りの場所でした!

オーナーの熱意によって(なお、ここのオーナーはシャトー・デ・ベルトランChâteau des Bertrands)、ウルティマット・プロヴァンス・デュ・シャトー・ドゥ・ベルヌUltimate Provence ou encore du Château de Berneも所有している)「むかしの農家」の雰囲気が再現されているここは、控えめに言って、すごく趣味がいいのです

シネ織物を張った調度類のどれもがそこにふさわしく、どの部屋もとても写真を撮らずにはいられません。テーブルも、ショップも、動物たちも、菜園も、ぶどう畑に向かって張り出したテラスも…何もかにもが素敵です

オーナーはまた、長期的にはここで自給自足できるようにしたいのだと思いを語ってくれました。その方向で、春にはパン職人がここにやってきました。水はほぼ敷地内でまかなえます。日に2〜5リットルのヤギ乳が得られ、これで美味しいフレッシュチーズや昔ながらの職人の製法による熟成チーズが造られます。3800 m²ある菜園は、ここで働くシェフに新鮮な季節の素材を提供してくれます。果物の樹、オリーヴの樹、そしてもちろんワイン造りのためのぶどうの樹があります。…つまり、のどかでビオで小さなパラダイスがここにあるのです。

シャトー・サン=ルー公式サイト (外部リンク) (英語)

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※オフシーズンに訪問される際には、事前に各ワイン農家に確認をしてから予約をすることをお勧めします。

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