アルザスの伝統菓子「パン・デピス」 職人のこだわり

素晴らしい窯の技を見にアルザスのムツィグやってきた。パン・デピスづくりを見に来たのだ。アルザス名産の微妙な味わいに溢れたこのお菓子は、私たちを優しく冬にいざなってくれる。元クリヨンのシェフパティシエ、クリストフ・フェルデルのアトリエで作られたパン・デピスは特にそうである。

古典的な味わいを完璧に再現していきたいと語るクリストフ・フェルデル。そんな彼のモット―は、最高の職人となるために文字通り伝統に従うことだ。「毎シーズン新製品を作ってマスコミに取り上げられることより、優れた職人になる方がずっと難しいのです。」
クリストフ・フェルデルは、シンプルでいること大切さを教えてくれた、自身の父親を手本としている。

11月のある朝、私たちはストラスブールから30分のムツィグにある彼のアトリエにやってきた。有名なパン・デピスを作るところをこっそり見に来たのだ。彼は、1年のうち2ヶ月しかパン・デピスを作らない。
「準備がとても長いのです。私のパン・デピスの秘訣は、物事をきちんとするために時間をかけることです。お客さんはこのパン・デピスを待っているのだという事を忘れてはいけない。さらに期間限定なので、その分喜びも大きいのではないでしょうか。」とパティシエ、クリストフ・フェルデルは語る。

「スパイスが一番肝心です。」

クリストフ・フェルデルの若き共同経営者カミーユ・ルゼックを中心に、8人のパティシエが、集中した様子で忙しく立ち働いている。仕事が始まったのは朝6時。チョコレート、ブリオッシュ、砂糖の香りが辺りに漂っている。そこにスパイスの強い香りが加わる・・・この申し分ないレシピの材料リストは、それだけで1頁が埋まってしまう。「スパイスが一番肝心です。いつも良質のものを選び、遠くまで買いに行くのを躊躇してはいけません。」クリストフ・フェルデルは最良のシナモンを手に入れるためによく日本に行くと打ち明けた。

クリスマスのお祝いのシンボル

オーブンや泡立て機の心地よい音が響く中、昔ながらのほうろう引きの鋳鉄の型にバターを塗る。というのは 「焼き加減が柔らかさの鍵・・・」だからだ。 温めた蜂蜜を小麦粉、粗糖、スパイスにそっと流し込み、スターアニスで香りをつけたミルクをそこに加える。クリストフ・フェルデルは言う:「各材料は、上質であることを目的に選ばなければならないので、一つ一つの工程に非常な注意を要するのです。」しかし、準備はこれで終わりではない。外観も非常に重要だからだ。クリスマスのお祝いのシンボルとなっている香り高いこの菓子は、小さなハート型や伝統的な家をかたどっている。「食べてみてください。ご存知の工業的に作られたのとは全く違いますよ。」

アルザスへの行き方