フェロートラベルの水澤社長に伺うサイクルツーリズムの魅力

スキーとサイクルツーリズムに特化した旅行会社フェロートラベルでは、初心者から経験者までを対象に安全に楽しく海外サイクリングができるツアーをプロデュースしています。自身でも企画から添乗までこなす水澤社長に、ヨーロッパでのサイクリングの魅力について伺いました。

ブームとライフスタイル

日本ではかつて「スキーブーム」というものがありました。バブル景気の全盛期、人々はかっこよくてセンスの良いスキーウェアや板を毎年のように買い求めて、冬になると待っていたとばかりに嬉々として雪山へと出かけたものです。しかし、技術やマテリアルを重要視する、そういったブームはいずれ廃れる。そしてこの日本のスキーブームも例外ではありませんでした。
一方、ヨーロッパの多くの国では、アウトドア系のスポーツが人々のライフスタイルの一部を占めています。山が雪に覆われる冬にはスキーを、そして雪解けを経て花が咲き乱れる時期には、同じ場所でトレッキングやサイクリングを楽しむ。一時のブームで経済的な売り上げを叩き出す日本とは、アウトドアスポーツについての根本的な概念が異なるのです。

日本ではなんとなく、生活に余裕があり休みも十分の取れる人の娯楽、という印象がついてしまっているサイクリングですが、ヨーロッパでは、全く違う受け止め方をしています。家族で自転車を楽しむ文化が盛んなヨーロッパでは、小さい頃からヘルメットをつけてロードバイクに乗る機会も多く、他にも健康増進や旅行の手段として、より幅広い層の人々の生活に根差しているのです。

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峠を越える楽しみ

そもそも、どうしてヨーロッパでここまでサイクリングが一般的に広まっているのかというと、地理的な要因が大きいのではないでしょうか。ヨーロッパには、峠がたくさん存在していて、古代、中世のころから様々な民族の軍事や通商の拠点としての役割を果たして来ました。だからこそ、峠を境に様々なものがドラマチックに変わるのです。景観が変わる、民族が変わる、言語が変わる。そして、これらの変化を肌で感じることができるのが、まさに自転車の魅力なのです。自転車の旅では、点のように存在する別々の場所が線としてつながり、河川、峠、氷河、古い町並み、食文化、、、そのすべてを連続して体験できるのです。その土地の文化や人々の生活に入り込むような感覚が得られるはずです。
例えば、アルプス山脈は長い年月の造山運動を経て隆起や氷河の形成を繰り返し、これまでたくさんの文化圏が栄えてきました。景観や文化の違い、フランス語圏、イタリア語圏、ドイツ語圏と交通標識が変化していくのを見ることができます。フランス屈指のヴィアローナは、スイス国境のレマン湖付近からフランス全土を縦走して、最終的には地中海へ出る。まさに旅そのものを楽しむのに一番ふさわしい手段ではないでしょうか。

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ツール・ド・フランス

イタリアのジロ・デ・イタリア、スペインのブエルタ・ア・エスパーニャと並んで三大ツールと称されるツール・ド・フランスは、年に一度フランスで行われる世界的な自転車のステージレース。日本ではまだ知名度は低いものの、フランスでは誰もが知っている国民的なイベントです。自転車ファンでなくとも、ツールを話題にする人はものすごく多い。そして大会の期間中ともなれば、世界中の自転車ファンが開催地へ押し寄せ、まさにお祭り状態のような賑わいになるのです。選手の通るコースを先回りして待つ人々もたくさん。様々な地理的障害を乗り越える様子を応援し、ゴールの歓びを分かち合います。ツール・ド・フランスの醍醐味は、毎年コースとなった土地の世界遺産や観光名所が紹介され、遠くにいても旅気分に浸れることでしょう。あまり知られていなかった小さな村々の美しい風景を鑑賞できるのも、ちょうど良いスピードで進む自転車だからこそ。車では速すぎるし、歩くのでは遅すぎるでしょう。
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日本におけるサイクリングの課題

こうしたヨーロッパの自転車文化を見ていると、日本のサイクリングの課題が見えてきます。まず、日本ではヨーロッパで当然のように徹底されている自転車マナーが浸透していません。ヘルメットをしていなかったり、無灯火で夜に黒い服を着たりする人を見かけるのは茶飯事ですし、走行路線も人によってまちまち。これでは、自動車や歩行者とのコミュニケーションが成り立たず、危険です。それから、交通インフラが十分に整備されていないのも問題です。自転車専用道路も少なく、それに信号がボンボン設置されている。例えば東京湾周辺も煙突ばっかりで景観に満足しえないし、全国の湖水周回道路も途中で閉鎖されてしまっています。本当に自転車を楽しめるフィールドがまだ少ない。

こういう背景があるからこそ、日本ではライフスタイルとしての自転車が受け入れられにくく、一握りのコアな自転車ファンに集中する傾向にあるのです。その多くは、自転車を選ぶ際にペダルやフレームのサイズにミリ単位でこだわり、素材やメーカーを気にして走るまでに時間がかかってしまったり、海外への観戦ツアーに出ても、その土地や食文化や観光などには関心を示さず、特定の選手やチームの練習風景、そしてレースにしか興味がなかったりします。
正直、これは勿体ないことだと思います。なぜなら、自転車の魅力はこうしたマテリアルやレースだけではないのですから。自転車の本質は、風を切りながら峠や山岳をも超えて、すべて行きたいところに運んでくれること。そして、自転車が入り口となって、様々な場所の歴史や地理、そして文化を学ぶことができる、そんな大きな可能性を持っているのです。

ニーズが専門的で細かく多岐にわたる今のサイクリング界では、旅行会社もなかなか手が出せないし、一般的にも生活に余裕のある人しか楽しめないというイメージが出来上がってしまいます。しかし、サイクリング先進国の欧米では、誰でもまずは乗って走ってみることが先決なのです。敷居が高いように見えるサイクリングは、実は気軽に楽しめる娯楽だということを知って欲しい。
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これからサイクリングを始める方へ

自転車のタイプやマテリアルをあまり気にせず、気軽な気持ちでまずは行きたいところを走ってください。疲れたら休んでも良いのです。20km走ってみて、それから50km、80km、100kmと少しずつ距離を伸ばして、そのうち峠を越えてみたりと、ステップアップしていくと楽しいです。
それから、やはり日本は服装やマテリアルに関して「これじゃないといけない」といった特殊な世界を作りすぎている節があります。ちょっと走れるようになったら、是非本場の海外に行ってみてください。フランスのピレネーやアルプス、ヴィアローナを、ロードバイク、クロスバイク、マウンテンバイク、さらにはEバイクのコンビネーションで走りぬく。体力作りやルートを決めたりする事前の準備も楽しいものです。フランスでは自転車のレンタルサービスも充実しているし、電車に積み込むことも一般的に行われていて、バリアは全然ないのですから。
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水澤 史
学生時代に読んだ故・黒岩達介氏(戦後二人目のオーストリア国家検定スキー教師)の著書「青春をスキーに」をきっかけに、オーストリアをはじめ海外スキーの世界に強くあこがれる。教職志望から一転して海外スキー専門旅行会社に入社。海外駐在、添乗、ガイド、企画販売、旅行手配、マネージメントに従事。1996年ニューヨークのビジネススクールへの留学を機に、世界で通用する旅行会社を目指すことを決意。現在、株式会社フェロートラベル代表として、海外スキー、トレッキング、サイクリングなど、スポーツツーリズム専門の旅を発信している。
フェロートラベル公式サイト (外部リンク)
フェローサイクルTOP (外部リンク)

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