じゃんぽ~る西さんのパリでワーホリ修行時代

Published on 2017年 8月 07日
  • © じゃんぽ〜る西/飛鳥新社『パリ愛してるぜ〜』

    © じゃんぽ〜る西/飛鳥新社『パリ愛してるぜ〜』

じゃんぽ~る西さんのパリでワーホリ修行時代

自身のパリ生活を描いたエッセイマンガ「パリ 愛してるぜ〜」シリーズで知られるじゃんぽ~る西さん。男性目線で描かれたリアルなパリが最高におかしく、またパリ愛を感じます。帰国後フランス人女性との結婚と子育てを綴った「モンプチ 妻はフランス人」シリーズも発表するなど活躍中。一念発起したワーキングホリデーでの渡仏生活や、現在に至る彼のフランスとの関りについて伺いました。

 

France.fr:漫画にはご自身のパリ生活を面白く描いていますが、パリ経験者にはあるあると笑えるし、これからパリに行こうという人には実際に参考になるリアルなパリ生活の指南書になっていますね。

じゃんぽ~る西さん:とにかくパリ生活では失敗しまくるんですよ。何しろやたらと失敗が多過ぎて、面白かったんですよね。日本の常識ではありえないような人がいるし、変な状況があるし。それをコピー用紙に4コマ漫画にしてバイト先やフェット(ホームパーティー)で見せると、みんな「あるねー」みたいな感じで面白がってくれたんです。実際につらい目にあった時には落ち込んでるんですけど、描くときには時間もたってるし、大変であればあるほど、笑いもあるんで。

実はパリ滞在中に別路線のストーリー漫画でしっかり企画も作っていたんですけど、日本で出版社に持ち込んだら、そっちは全然ダメで、まあパリのほうも基本的に駄目だったんですけど、女性漫画誌の一つが声をかけてくれて実現したんです。

ⓒじゃんぽ〜る西/飛鳥新社『かかってこいパリ』

 

France.fr:ワーキングホリデービザを取得してパリに行かれましたが、そもそもの目的はどんなものだったんですか?

じゃんぽ~る西さん:それまでは漫画家を目指しながら連載のアシスタントの仕事をしていたんですが、目途も立たないし、目標が欲しくてワーキングホリデーの制度に30歳でダメ元で申し込んだんです。バンド・デシネ(フランス独特の漫画ジャンル)の国でもありますし。でも、なぜか行く直前に仕事が決まってしまって。3年間ダメだったのに編集者に「じゃあ君はうちの雑誌の新人としてプッシュしていくから」と言われて。で、フランス行きは言い出せないまま(笑)、頑張って2本続けて載せてたんですけど、その流れで「来月からフランス行くから」とか言ったんで、急に何言ってんだ?みたいな感じになっちゃって。こっちはずっと決めてたんですけど。

最終的には、まあ行ってもいいけど、三カ月で様子見て戻って来いと。ごく常識的な判断ですよね。雑誌も新人育成の計画がありますから。

France.fr:そんな形で住んでみたパリ生活はいかがでしたか?

じゃんぽ~る西さん:楽しかったですよ。結局一年間帰らなかったですし。やっぱり日本と全然違う時間の流れというか、友達がすぐ近くに住んでいて、フェットしたりとか、バイトの後にカフェに行ってだべったりとかそういう生活を楽しんでいましたね。

日本食品のスーパーでバイトしながら、どっぷり現地の日本人コミュニティの中で仕事も生活も全て調達してましたね。僕はフランス語もできないので、フランス人で日本語か英語を話せる人とだけ友達になっていました。

ⓒじゃんぽ〜る西/飛鳥新社『パリ愛してるぜ〜』

France.fr:漫画の修行の方はどうだったんですか?

じゃんぽ~る西さん:実際は漫画家らしいことは何もせず、ただただ、普通に生活していましたね。バンド・デシネの世界ではアシスタントという制度もなかったですし。

最初は日本の仕事を少ししていて、夏だったんでホラー漫画を描いてくれとか注文を受けたりしたんですけど。でもこっちはパリの夏ですからね、なんでお化けとかの話とか描かなきゃいけないんだみたいな(笑)。そんな気持ちでやってるんで全然ダメでしたけど。

France.fr:なんか随分話変わってきてますけど…

じゃんぽ~る西さん:でも仕事しなきゃみたいな気持ちは凄くあったんですよ。「もっと漫画やらなきゃ」みたいな苛立ちというか。日本で活躍している人もいるのに、こっちはコインランドリーで洗濯物をいっぱいに詰めた袋を持って自転車乗ってる時とか、「何やってんのかなー」っていう焦りみたいなのはありましたね。

France.fr:青春ぽいですね。結果的にはそれが取材になっていたんですよね。

じゃんぽ~る西さん:まあ、今にして思えばですけどね。一年やって帰ったら、雑誌の流れは全然変わっていました。でも悔いはないですけどね。外から見ると「あいつ何やってんだ」みたいな感じかも知れないですけど、決まったらもう周りに何言われても迷わない時ってあると思うんですよ。若かったからリスク勘定も全然なかったですし。32でしたけど。

ⓒじゃんぽ〜る西/飛鳥新社『パリ愛してるぜ〜』

France.fr:西さんの作品からは本当にリアルなパリ愛を感じるんですけど、パリでお気に入りの場所とかありますか?

じゃんぽ~る西さん:パリは散歩ができる街ですよね。僕がバイトしてたのはオペラ界隈だったので、ルーヴルやチュイルリー公園まですぐ歩けるし。セーヌもあるし。カナル・サン=マルタンとか、絵になるところばかりなので。ベルヴィルみたいなゴチャッとした所も良いですよね。

あと高いところが好きなので、サクレクール寺院とかはあの形も含めて好きです。凱旋門もエッフェル塔も、ギャラリーラファイエットの屋上のカフェテラスとか。屋根裏部屋にも住んでましたし。7階でエレベーターなしの。日本だったら考えらんないですけど。一年住んでできると思ったんで、日本でも5階のエレベーターなしに住みましたね。高いとこに住みたいと思って。

France.fr:漫画でもアパルトマンの屋根に出たりとかしてましたけど。あれは本当に?

じゃんぽ~る西さん:してましたよ、普通に。柵に座って飲んだりとかしてましたよ。

 

ⓒじゃんぽ〜る西/祥伝社フィールコミックス『モンプチ 嫁はフランス人』 

 

France.fr:
じゃんぽ~る西さんは現在、フランス人の奥様と東京で子育てをしています。その生活を描いた漫画「モンプチ 嫁はフランス人」も人気です。これはどんなきっかけで描かれたんですか?

じゃんぽ~る西さん: 編集の方に言われて描いたってのが正直なところではあるんですけど。子育てもフランス人の奥さん(カリンさん)との生活も楽しいことが多いんで、それをエンタテイメントとして描きたかったんですが、結構1年くらい悩んでました。「モンプチ」は子育て、「嫁はフランス人」は国際結婚とコンセプトも絞れなくて。結局編集者も見切り発車で、とりあえず出てきたものを描くみたいな。思えばパリのときと同じなんですけど(笑)。

France.fr: 今は社会的にも男性の育児参加が取りざたされています。漫画で描かれたような、西さんは自宅で子育てと仕事をし、カリンさんは外で仕事してというライフスタイルは相当な先取りという感じですが。

じゃんぽ~る西さん: いや全く。そういう形を目指したわけじゃなくて、たまたま乳幼児の頃の自分たちのやり方がそうだっただけです。よく主夫の子育てライフを発信してみないか、と言われることあるんですけど、そこまで提言できるほど理論化できてないですし。それができれば漫画家としては優秀なんでしょうけど。うちの場合は環境が特殊すぎますしね。妻は外国人だし、フランスの会社に勤めてるし、僕は在宅のフリーランスだし。僕の仕事なんか時間めちゃくちゃですからね。週末も夜中も関係ないし。

France.fr:フランス流ライフスタイルってわけでもないんですか。

じゃんぽ~る西さん: 妻の考え方はフランス流ですね。バカンスはちゃんととるとか。会社に行っても今日は何時に帰るよとか。それで融通つかないときは家に持ち帰ったり、疲れてる時はラッシュの時間とずらして出勤したりとか。日本企業だとどこまで都合つくのか分からないですけども、妻を見ているととにかく会社と交渉しますよね。子供が熱出して、なおかつ夫も今週は忙しいとか。お互い様なんでしょうけどね。え、いいの?って僕が思いますよね。こんなこと言っていいんだ、みたいな。会社も言うのが当たり前みたいな意識ですからね。

ⓒ西村・プぺ・カリン/大和書房『フランス人ママ記者、東京で子育てする』 

France.fr: そうした働き方の姿勢というのは、男性の子育て参加や出産後も女性が仕事を続けていく上での大きなヒントになりそうですよね。漫画に描かれる子育ての様子を見ると、赤ちゃんと過ごしている時間がとってもいいなと思いますよ。

じゃんぽ~る西さん: 偶然でしたけど、本当にいい経験させてもらったとは思いますね。子供は思ったよりもすぐに成長しちゃうんで。その時期お父さんとして子育てできて良かったなと思います。息子との関係もすごく良くなりましたし。

僕がおむつを毎日変えてると、それが赤ん坊でも分かるんだって事を学びました。僕は自分が3歳以前の記憶がないので、3歳くらいまでは誰が何したって分かってないと思ってたんですけど、とんでもない勘違いでした。

 

France.fr: 日仏で子育ての考え方の違いを感じることはありますか?

じゃんぽ~る西さん: 今は妻も僕も日本の保育園にはとても満足していますが、たぶんもう少し大きくなるといろいろあると思うんですよ。

学校教育以外の塾に通わせるとかが、妻には強い違和感があるようです。例えば正月の親戚の集まりに中三の子は冬期講習の特別講義があってこられないとか、そういうのは妻にはショックだったみたいですね。息子にはさせたくないと明確に言っています。勉強の仕方に関しては日仏で考え方が真っ向から違うんで、それも今後解決していくことだと思います。

子育てって結局はチームワークなんで、カップルがお互いそれぞれに一番いい方法を、その都度選んでいく以外にないと思いますよ。何かモデルがあって完璧にやろうとすると大変ですし。日本のお父さん達を見ていると、仕事でも家庭でも凄く高いことを要求されていて大変だなーと思いますよ。僕なんかじゃとても務まらないなと。その点は妻も、お互いに寛容の心で助け合っていくという事で一致してますね。

 

 

じゃんぽ〜る西

漫画家

2005年の1年間パリに滞在し、その経験をエッセイ漫画「パリ 愛してるぜ~」(飛鳥新社刊)他、三部作として発表。2012年フランス人女性と結婚し、国際結婚と育児をテーマに「モンプチ 嫁はフランス人」(祥伝社刊)を発表。作品はフランスで仏訳出版され、パリ、ニューカレドニア、タヒチ等フランス語圏でのブックフェアに参加している。

妻はAFP通信社の東京特派員、西村•プペ•カリン。近著に『不便でも気にしないフランス人、便利だけど不安な日本人』(8月23日出版)。