猫沢エミさんの 一歩先のフランス旅

Published on 2017年 5月 24日
猫沢エミさんの 一歩先のフランス旅

全国の書店やフランス関連のレストランなどで見かける、フランス情報のフリーペーパー「Bonzour Jaopon(ボンズール・ジャポン)」。今年で10周年を迎えたボンズールの編集長でミュージシャンでもある猫沢エミさんにお話を伺います。パリにも住み、またフランス各地を取材した猫沢さんに、お気に入りの場所、とっておきの旅のノウハウを伺いました。

 

France.fr ボンズールはパリやフランスの地方都市の観光情報を扱っている貴重な情報誌ですけれども、もう創刊10年になります。

猫沢さん:私自身大人になってからパリに住み始めたので、リアルなフランスの様子を伝えたかったんです。お洒落過ぎずリアルな、現地のフランス人はこんなことして楽しんでるよ、ってことを。当時フランスの情報って雰囲気が先行しがちで実際に行く段になると「で、どうやって行くんだっけ?」みたいになることが多かったんで、そういう情報もきちんとフォローしたくて、今のような形になりました。

 

France.fr10年間の取材でフランス各地を回ってきた中で、特に好きな場所はありますか?

猫沢さん: そうだなあ〜…好きなところはこれまでの取材旅で数え切れないほどありましたけど、歳をとって暮らしたら素敵だろうなと思ったのが、ブルターニュのサン・マロや港町カンカルです。ここはモン・サン・ミッシェルと同じ遠浅の海岸が続くエリアで、海が満ちたり、なくなったりする自然のスペクタクルを、のんびりとかわいく伝統的な港町の景色と一緒に味わえるんですよね。フランスの料理好き界隈には有名なスパイス・ハーブ屋さん『Epices Roellinger エピス・ローランジェ』をはじめ、「どうしてこんな小さな田舎町へ?」と失礼ながらも尋ねたくなるような実力のシェフや、パティスリーなどあらゆる美食家が世界中から訪れる、ちょっと特別な町なんです。

ブルターニュ人をフランス語でブルトン/ブルトンヌ と言いますがルーツもラテン系じゃなくてケルトの祖ですから、南仏のあけすけな親しさとはまた違った、生真面目な温かさがあって。年取ってカンカルに住んだらいいなーと思いました。

 

France.frブルターニュは日本でも紹介される事が少ないですが、ケルト文化が好きな人も多いですしね。

Sete ©Atout France/Nathalie Baetens

猫沢さん: あと南仏で良かったのが地中海に面した小さな町、セット(Sète)ですね。私はフランスの映画評論もしていることもあって、アニエス・ヴァルダ(ヌーヴェルヴァーグ女流映画監督)が映画を撮り始めた街ってことで興味があって。ニースマルセイユみたいな大きな街ではないので派手さはないんですが、なんとも情緒があっていいんですよね〜。料理が趣味ということもあり、フランスの津々浦々に出かける際には地元特有のお料理や食材にとても興味を持って取材します。食から見えてくる人々のお土地柄ってあるなと思っていて。なので、食は毎回ことの他熱心に取り組みます。笑 たとえばセットなら、タコのトマトソース・パイという、一聴してもピンとこないここだけの名物パイがあるんですけど、めちゃくちゃ美味しいんですよ。老舗のタコパイ屋は、もうそれしか売ってないっていう専門店で。お菓子なら南仏マルセイユ一体の銘菓・ナヴェット。かた〜いビスキュイ生地にアニスやオレンジ水の香りづけがしてあって、あの匂いを嗅ぐと南仏の景色が今もぱーっと蘇りますね。

ほかには地中海のスペイン国境至近の街・コリウールもよかったですね。ほとんどスペイン文化圏のコリウールは、ペルピニャンという大きな街からもほど近い小さな港町で、絵本の世界のようにかわいらしい風景なんです。地方都市からもう一歩足を踏み入れると、外国人もまだあまり来ていないような、昔ながらの田舎らしくて素敵なところがフランスにはたくさんあって好きですね。

 

France.fr地方でも小さな町に面白みを感じるんですね。フランスの小さな村や町は近年人気が高まっていますよね。そういう小さな町はどうやって選んでるんですか?

猫沢さん:地図広げて、えいや!みたいな(笑)。っていうのは半分冗談ですけど。企画会議で、各スタッフがこれから取材してみたい箇所をプレゼンテーションするんですよ。そこにいる他のメンバーにもピンときたら即決する、みたいな。そもそもうちの編集者はみな、常日頃から自然とフランスの文化や時事ネタを集めている人たちなので、プレゼンで出てくる街は、きちんと理由があって選んでいるんですよね。結果、厳選したものだと決定もはやいと(笑)

メッスの街並み ©Atout France/PHOVOIR

France.fr取材で行かれるような地方都市はどうでしょうか?

猫沢さん:先日取材したメッスは、建築や歴史ある街並みが良かったです。中世の町は城壁で閉じられていて、小さい中に良くまとまってる感があって好きなんです。コンパクトで歩いて回れる割に、起伏もあって風景がいろいろ変わったりして。私は田舎育ちなので自分の足で回れるくらいの小さな町のサイズ感が心地良いのかもしれないですね。

 

France.fr地方都市を旅する時のコツや、アドバイスなどはありますか。

猫沢さん:旅を面白くするには自分なりの視点を持つ頃が大事ですよね。先日取材した町でも歴史的価値のある建造物をガイドさんが説明してくれたんですけど、私は一歩奥にある関係ないものをすぐ見つけちゃうんですよ。あっ、活版印刷所がある!とか。いつも見ているはずのガイドさんも「私も知らなかった。次からコースに加えよう」って言ってくれました(笑)。暮らしている人には、日常になりすぎてしまって見落としているその町の魅力を観光客の目線と好奇心が発見する、っていうのも旅の面白さだと思います。

 

France.fr必ずしもガイドブック的な名所がなくても、行ってしまえば見るべきものはあると。

猫沢さん:そうそう。旅の醍醐味ってね、本当はそこに尽きると思うんですけど、でも何にもベースがないとどう回ればいいか分からない。だからボンズールなんかを見て回りながらも、その合間合間に自分だけの出会いを見つける体験をしてもらいたいなと思って作っています。

 

France.frプログラムから外れたところ、一歩先に面白みがあると。一方で長く住んでいたパリについてはいかがですか?

猫沢さん: 長く住んでいてもエキスパートにならずに、いつも何か発見していたいですよね。パリはあの8キロ四方の街で、いまだに「なんだこれ?」みたいな発見があるし。初めて来た人と同じ気持ちでいようといつも思っています。エッフェルなんか見飽きた…とか斜に構えるんじゃなく、見るたびに「わ〜キレイ♡」と素直に感動する気持ちといいますか。(笑)在住15年になるような友達もいまだに、夕暮れのセーヌを見て、きれいだよねーって言ってますからね。パリってやっぱりちょっと特別な街なんです。

夕暮れ時のパリ、セーヌ川 ©Atout France/Hervé Le Gac

France.frパリの人達はみんなセーヌ川が好きですよね。

猫沢さん:これからの季節、夏は日が長いのでサンドイッチを買ってセーヌ川沿いで一夜を明かして飲み続けるのとかいいですよ。セーヌ川沿いでピクニックって、現地の人はよくやるんですけど。そういうのが心に残るんじゃないかな。私は、フランス人の「お金をかけなくとも日常を心豊かに過ごせる」という人生の美学がとても好きなんで。

 

France.frこれからパリやフランスを旅行する方にアドバイスはありますか?

猫沢さん: パリの街歩きでは一日の予定をがっちり決めないで、行きたい所1ヵ所だけ決めておくくらいがいいと思います。美術館に行って夜はレストランで食べるとしたら、その間は予定をスッカスカにしておいて、偶然を楽しむっていうのが素敵ですよね。ふと入ったカフェが気持ち良かったらずっといてもいいし、セーヌ川が気持ち良かったらそこで本読んでみても良いし。そういう時間の出来事が心に残ってる事が割と多いので。

パリも初めての時は予定組んで観光地を回ると思いますけど、2回目からは段々スカスカにしていって、慣れてきたら朝起きて天気次第、気分次第で決めたりすると、普段とは違う時間の流れに入って癒されると思いますよ。明日の気分は明日の自分にならないと分からないっていうフランス人的な感覚を実践できたら、フランスを満喫できたって思うかもしれないですよね。

 

猫沢エミ:

ミュージシャン、文筆家、映画解説者、BONZOUR JAPON編集長。1996年日本コロムビアよりアーティストとしてデビュー後、2002年に渡仏。現在は東京とパリを往復する生活。2007年より、フランス文化に特化したフリーマガジン『BONZOUR JAPON』の編集長を勤める。『パリ季記』地球丸・刊、他フランスに関する著書多数。

 

 

〜Bonzour Japon 編集部よりご挨拶〜

《Nos 10ans de Bonzour Japon!満員御礼》

2017年6月 Bonzour Japon 10周年記念トークイヴェント「Nos 10ans de Bonzour Japon〜私たちボンズール・ジャポンの10年」(チケット完売)が行われます。残念ながら今回は発売1時間で完売になる満員御礼で、ご紹介する機会もとても短く申し訳ありません。これをきっかけに、こうしたイヴェントを定期的に開いていくことを検討しています。これからもみなさんの温かな応援をよろしくお願い致します。www.bonzour.jp

 

〜編集長・猫沢エミさん、ワンマンライブ〜

《 Emi Necozawa & Sphinx Live @JZ Brat 渋谷 》

ミュージシャンという顔も持つ猫沢さんは、最近マーク・ド・クライブロウやモーマスなどの海外ミュージシャンとのコラボレーション制作が盛んで、日仏語3D水彩アニメーション『ANNA Voleuse』では、音楽監督と作曲を務めたそうです。こちらの映画は、来年一般公開されるかもしれません。そんなミュージシャンの顔の猫沢さん率いるジャズコンボバンド Emi
Necozawa & Sphinx のワンマンライブが2017年9月22日(金)JZ Brat渋谷で行われます。チケットの発売開始は7月中旬を予定。詳細は、追ってinstagram :@necozawaemi 他にて。JZ Bratサイト(7月中旬情報アップ予定)