著名人に愛されたレストラン

  • © Atout France/Stéphane Frances

  • © Atout France/Jean François Tripelon−Jarry

著名人に愛されたレストラン PARIS fr

フランス各地に存在し、今日では伝説的存在にもなっている老舗カフェやレストラン。創業年数や歴史的建造物といった建築面の価値だけではなく、そこに通った文化人やアーティストによって花開いたカフェ文化、逆にカフェが生み出した多くの著名人こそがカフェの存在価値でもあるのです。彼らが残した軌跡が、こういった老舗カフェの神秘性を高めたといっても過言ではないでしょう。
つい最近までサン・レミ・ド・プロヴァンスの老舗カフェ、「カフェ・デ・ザールCafe des Arts」と言えば、年月を経て古艶の出たカウンターに肘をつきながら、詩人ジャン・コクトーや画家パブロ・ピカソが出入りしていた古き良き時代のプロヴァンスを想起させました。
しかしながらこのような郷愁に浸るのもすでに年配の人だけになってしまったようで、今日では店に残された芳名録だけが過去の追憶をたどる唯一の手掛かりのようです。とはいえ、フランス各地に伝説的なカフェは今も多く存在し、作家や画家、更には映画スターが残した足跡を辿ることができます。以下、フランスの文化的財産ともいえる老舗カフェやビストロをその歴史と共に紹介します。


 


フランス各地の老舗レストラン


ロヴェルニュ・ド・ラ・コロンブ・ドール L'Auvergne de la Colombe d'or (サン・ポール・ド・ヴァンス)


http://www.la-colombe-dor.com


南仏、鷹の巣村の中でも最も人気のあるサン・ポール・ド・ヴァンス。丘の上に横たわる風光明媚な村の入口に「コロンブドール(金の鳩)」というアンティークなホテルがありますが、併設のレストランはかつて、ピカソやマチス、シャガールなどが集い、食事をしていた場所でした。売れない画家だった時代に、彼らが食事代代わりに置いて行った絵や、寄贈したオリジナル作品の数々が今日では小さな美術館と呼んでもいいような非凡な雰囲気を生み出しています。
巨匠の価値ある作品を鑑賞しながら食事ができ、カンヌからほど近いロケーションもあってか映画スターにも愛され、70年代にはソフィア・ローレンSophia Lorenやイタリアの名優リノ・ヴァンチュラLino Ventura、イヴ・モンタンYves Montandなどの著名人がひいきにしました。 


カフェ・ド・モリエールCafe de Moliereとラ・シガールLa Cigale(ナント)


http://www.lacigale.com/
ロワール地方最大の都市ナントの旧市街中心地にある有名なグラスランGraslin広場には、老舗レストランがふたつあります。ひとつは、文豪スタンダールが好んで通ったとして知られる、グラスラン劇場を背にしたカフェ・ド・モリエールCafe de Moliere。もう一つはそのすぐ隣にあるブラッスリ、ラ・シガール La Cigaleです。
ラ・シガールは今日でこそ「流行りのお洒落なカフェ」というイメージが定着していますが、もともとは1895年に、当時の流行アール・デコ装飾で建てられた高級レストランです。今もなお20世紀初頭のベルエポック調の装飾を残し、歴史的記念物の指定を受けています。シュルレアリストとして知られる作家アンドレ・ブルトンAndre Breton や詩人ジャック・プレヴェールJacques Prevertなどの作家に愛された他、映画監督ジャック・ドゥミーJacques Demyが作品「ローラLola」の撮影場所として利用しました。 


レ・ドゥー・ギャルソンLes Deux Garcons (エクス・アン・プロヴァンス)
「2人の給仕」という名の1792年創業のカフェ。エクス出身の画家ポール・セザンヌPaul Cezanneや文豪エミール・ゾラEmile Zolaが若かりし頃足繁く通い、語り合ったという歴史あるカフェです。今日は常連客に「レ・ドゥ・ジェイ les 2 G」の愛称で親しまれています。市街中心地、ミラボー大通りの中ほどに18世紀末から続く老舗カフェで、内装は、金装飾や鏡張りの壁、天井に施された素晴らしい彫刻など、ナポレオン帝政時代の華麗なエンパイアスタイルを残した重厚な趣きで、入るのに少しためらうかもしれません。火災にあい一度は焼失したものの、修復工事の末に当時の姿に近い形で再び生まれ変わりました。
ミラボー大通りは16世紀の貴族の館や古い本屋、カフェが並び、美しいプラタナスの並木が続くエクス・アン・プロヴァンスのメインストリート。弁護士から学生まで多くの人々で常に賑わう通りです。毎年7月に開催される世界屈指のオペラ祭、エクス=アン=プロヴァンス国際音楽祭Festival d'art lyriqueの時期は、国際的に有名なスターで溢れ返ります。往時のエディット・ピアフEdith Piafやマルセル・パニョールMarcel Pagnol、アルベール・カミュAlbert Camusなどの著名人も立ち寄り、荘厳な雰囲気の中、束の間の休息をとったと言われています。


ヴァン・ゴッホ・カフェ Le Cafe Van Gogh (アルル)
19世紀末の絵画の巨匠ヴァン・ゴッホが精神の病を煩いながらも制作活動に打ち込んだのが、光あふれるプロヴァンスの街アルル。周囲を美しいカマルグの湿原地帯に囲まれ、今も中世の面影を残す街です。アルル市庁舎近く、フォーラム広場にあるカフェはゴッホがよく通った場所で、傑作「夜のカフェテラス」(1888年)のモデルとなりました。現在も絵のタイトルと同名でビストロとして営業しており、往時の雰囲気をそのままに伝えています。



ラ・ターブル・ロンドLa Table Ronde (グルノーブル)
1739年に誕生したグルノーブルの歴史あるカフェ「ラ・ターブル・ロンド」。美しいサン・タンドレ広場に面し、ゴシック様式とルネサンス様式が融合したファサードを持つ旧ドーフィネ議事堂に隣接しています。パリの「ル・プロコープ」に次いでフランスで2番目に古い老舗カフェで、ローヌ・アルプ地方のカフェの歴史はここから始まったとされています。
グルノーブル生まれの文豪スタンダールは勿論のこと、19世紀末、第3共和政の基礎を築いた政治家ガンベッタや、第4共和制下で首相を務めたレオン・ブルムといった早々たるメンバーがこのカフェに出入りしていました。また多くの文人や芸術家が集い、歌手サラ・ベルナールもよく訪れました。近年、都市開発が進み、学生都市として発展を続ける若々しい街、グルノーブルにおいて、昔と変わらぬ亜鉛板のカウンターで、一年を通じて由緒ある本物の郷土料理を提供し続ける貴重な存在の一軒です。


 


パリの伝説的カフェ


マキシムMaxim's


http://www.maxims-de-paris.com
1893年に、とあるカフェの一ギャルソンだったマキシム・ガイヤールMaxim Gaillardによって創業されたレストラン。開店当初は大衆的ビストロに過ぎなかったマキシムですが、ガイヤールの死後に店を継いだ支配人ウジェーヌ・コルニュシェの優れた経営力によって発展し、フランスを代表する伝統と格式を重んじた高級レストランのステイタスを不動のものにしました。
アール・ヌーヴォーの装飾が施された店内には、オッフェンバックのアリアを想起させるような高級娼婦達が連夜出入りし、フランスの名士はもとより、海外からも大富豪、芸術家、文豪など各界一流の人々が集まるようになりました。ベル・エポック時代のパリ、その社交界の縮図であったといっても過言ではないでしょう。歌手ミスタンゲットや小説家マルセル・プルーストなども訪れ、世界の歌姫マリア・カラスも常連客の一人でした。また欧州各国の王侯貴族もパリを訪れる度にお忍びでマキシムに立ち寄ったとされています。
1981年にファッション・デザイナーのピエール・カルダンがオーナーとなって以来、ロンドンやニューヨーク、北京などの大都市に支店をオープン、パリの本店も近年ではショー開催や展示場としての機能が強まり、嘗て栄華を極めた高級レストランはその格式の高さを失いつつあるようです。



ドゥルーアンDrouant


http://www.drouant.com/
もともとは1880年にアルザス出身の商人がパリ2区オペラ座近く、ガイヨン広場の一角に開いたレストラン。重厚なインテリアで、昔は多くの作家や芸術家が集い、とりわけ2人の有名な「オーギュスト」(画家オーギュスト・ルノワールと彫刻家オーギュスト・ロダン)がひいきにしていました。しかしながら1903年に、パリの知識階層がこのレストランを拠点に文学委員会を発足して以来、フランス文学界の登竜門とされるゴンクール 賞の選考会場として世界中にその名を知られることになりました。毎年アカデミー・ゴンクールの10人の会員によって、この高級レストランで11月に選考・発表が行われます。

レ・ドゥ・マゴLes Deux Magots


http://www.lesdeuxmagots.fr
左岸の文教地区カルチェ・ラタンの外れ、サン・ジェルマン・デ・プレ広場で常に賑わいを見せる老舗カフェ。19世紀末には作家アルチュール・ランボーがひいきにし、「ロマン派カフェ」の異名もとりました。それから50年の後、レ・ドゥ・マゴははすっかり哲学カフェとしての位置を確立し、実存主義者ジャン=ポール・サルトルなどのお気に入りの議論の場所になったのです。

ル・カフェ・ド・フロールLe cafe de Flore


http://www.cafe-de-flore.com
上記紹介したレ・ドゥ・マゴに並んでサン・ジェルマン大通りに建つ、第2帝政期1860年に創業した老舗カフェ。レ・ドゥ・マゴとセットでサンジェルマンを代表するカフェとして有名で、50年代には実存主義者や芸術家のたまり場でした。ボリス・ヴィアンも足繁く通ったとされ、60年代に入るとヌーヴェル・ヴァーグの映画監督のお気に入りのスポットとなりました。

ラ・クロズリー・デ・リラ La Closerie des Lilas


http://www.closeriedeslilas.fr/
1847年創業、モンパルナスでも最古参の文学カフェ。周囲をリラの花が咲き乱れる小さな庭に囲まれ、19世紀後半には既に芸術家のたまり場になっていました。ボードレールやヴェルレーヌなどが好んで通ったため「詩人カフェ」の異名も取りました。ロシアから亡命中のレーニンはこのカフェでチェスを打っていたそうです。その後、文豪ヘミングウェイがここで原稿を書いて書斎代わりに利用したり、20世紀の偉大な作家アラゴンや画家ピカソなどに愛されました。



ル・フーケッツ Le Fouquet's 


http://www.fouquets-barriere.com/
パリ最大のナイトライフスポット、シャンゼリゼ通りにあって「パリ屈指の高級カフェ」の位置を不動のものにしている贅を極めたカフェ・レストラン。歴史的建造物にも指定され、映画スターから政界人物まで、常に多くのセレブを惹きつけて止まない一軒です。


 


最も歴史のある老舗レストラン


ル・プロコープ Le Procope (パリ)


http://www.procope.com
パリ最古のカフェ。1686年に創立された後、ダントンやロベスピエール、マラーやベンジャミン・フランクリンといった人物が議論を交わした場として、歴史的にも非常に重要な意味を持つ一軒です。



ラ・ペルーズ La Perouse (パリ)


http://www.laperouse.fr
パリの6区、セーヌ河岸にある18世紀の洋館の雰囲気をそのままに残した老舗レストラン。1766年に創立された当時の面影を今日も残し、アラン・デュカスの弟子にあたるサミュエル・ベンヌの伝統的なフランス料理を堪能できます。



ラ・メゾン・カメルゼルLa Maison Kammerzell (ストラスブール)


http://www.maison-kammerzell.com
ストラスブール大聖堂の前に建つ、16世紀末の古い木造建築で有名なカメルゼル邸。フレスコ画と木彫装飾が特徴。1904年からは田舎風高級レストランとして営業しており、今日ではストラスブールでも最もシックなレストランの代表格になっています。


 


 


 

見どころ

見どころ